バリヒンドゥー

モンキーフォレストから帰った後は、トマさんたちに誘われ、地元のお祭りに行くことに。

 

観光客でも立ち入る際には正装が必要らしく、宿の従業員イルに手伝ってもらいながら、民族衣装の着付けを行う。

内心、「こんなやる必要ある?」と面倒な作業に悪態をつきたくなっていたが、いざ準備が整い会場へ向かうと、地元の人、周りの人は全てばっちり正装していた。

 

小さな子から、お年寄りまで、みんなが集まっており、厳かな雰囲気の中、観光客向けのイベントの要素は全くなく、ローカル色が濃い。

 

外国人というだけでも相当浮いている。

みんなが好奇の目で見ているが、正装していたことによって不思議とこの場に馴染めている。

これは私服なんか着てきた日には入場することすら許されないなと、自分の甘さに反省。

 

周りではインドネシアの民族楽器、ガムランの演奏が行われ、それに合わせて踊ったり、礼拝している人、それぞれが思い思いに過ごしていた。

実はトマさんはガムランの演奏者。

ガムランに魅せられて、ここバリに来ている。

目の前で奏でられるガムランの心地いい音色は、日本では聞き慣れないが、哀愁が漂い、どこか懐かしさも感じる。

心地よさを感じながら、トマさん、リンさんとただ耳を傾ける。

 

外は雨が本降りになってきた。

降りしきる雨の音色、ガムランの音が、とても神秘的だ。

 

雨宿りをしていると、地元の人が一緒に礼拝をしようと声をかけてくれた。

と言っても英語は話すことが出来ず、身振り手振りでおそらくそのようなお誘いをしてくれてると推測する。

教えられるまま、聖水のような水を振りかけられ、そして飲み、お香を焚いて、花びらを持ちながらお祈りする。

お供えものであろう、米粒を額や首につけて、改めて礼拝する。

 

本当はバリ観光で有名なケチャダンスを見に行こうか迷っていた。

しかし、ここへ来ることにして良かったと思う。ツアーじゃ味わえない、とてもレアな経験だ。

 

いつもはうるさいバリ人だが、やはり自分の信仰してる神様の前では、真剣そのものだ。

 

そもそもインドネシアイスラム教の信者数が世界一多い。

しかし、このバリだけはヒンドゥー教から派生したバリヒンドゥーと呼ばれる独特な宗教が普及されていて、この信者がバリ島の90%を占める。

 

無宗教の私には、なかなか理解し難い事も多い。

中でも「ニュピ」という日には、バリ島の人々は一切の活動が制限され、私たち観光客でも外に出ることは許されない。

悪霊が去るのを瞑想してただただ待つのだ。

全ての営業が禁止され、島の電気は全て消し、飛行機すら発着しない。

そんな日があると聞いた時は理解もできなかったが、今は何となく、少しだけ、深さが伝わる。

実際に信者の方と礼拝をすると、バリヒンドゥーの神々しさを感じる。

心の拠り所が必要などと、安易な考えでモノを言うのも憚れる。

それでも、多くの人が信仰するのも少しわかる気がした。

 

街を歩くとそこら中で見かける「チャナン」と呼ばれるお供えもの。

うっかり踏みそうになる事もしばしばだが、ひとつひとつに想いがこもってると思うとなんだかとても素晴らしい。

 

結局、なんの祭りだったのかはよくわからないままだったが、自分の中ではとてもエキサイティングで、興奮した1日だった。